不動産を相続する方法(相続する際の流れ)
① 遺言書の有無を確認
まず最初に遺産相続が生じた場合、遺言書の有無をご確認いただきます。遺言書が残されている場合は、原則としてその内容に基づいて相続手続きを進めることとなります。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がございます。
自筆証書遺言 | 【作成方法】遺言者が自書し、押印 【保管場所】遺言者が個人で管理 【検認】必要 |
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公正証書遺言 | 【作成方法】遺言者が口頭で遺言の内容を公証人に伝え書き記して作成 【保管場所】原本を公証役場で管理 【検認】不要 |
秘密証書遺言 | 【作成方法】遺言者が遺言を作成し公証人と証人は遺言の存在のみ確認し作成 【保管場所】遺言者が個人で管理 【検認】必要 |
遺言書の保管場所によっては、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認する「検認」の手続きが必要になります。検認を行わずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料が課されます。
② 相続人を確認
遺言書が遺されていなかった場合は、基本的に民法で定められた法定相続人が財産を相続いたします。法定相続人の調査は、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取得して行い、戸籍謄本から親族関係となる方々を全て洗い出し、法定相続人を確定させます。
③ 相続する財産を確認
相続人が確定次第、次は遺された財産が何であるかを確認する必要がございます。相続財産に不動産を含まれているかどうかは、市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認することで分かります。また、相続財産の総額は、不動産以外のものも含んだ遺産総額を算出したうえで計算しなければなりません。この時、相続財産に多くの借金や未払いの税金などの債務がある場合、相続を希望しない場合は相続放棄を行うことも可能です。相続放棄を行う際には、相続の開始を知ってから3か月以内に、家庭裁判所へ書類を提出し、相続放棄の申述手続きを行う必要がございます。
④ 遺産分割協議を行う
上記②相続人と③相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。(※遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割について話し合い、合意に至るための協議です)分割内容の合意を得られたら、遺産分割協議書を作成します。この書類には、相続人全員の署名捺印が必要となります。協議を経ても合意が形成されない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停を申し立てることになります。遺産分割調停とは、家事審判官(裁判官)と調停委員(非常勤の裁判所職員)からなる調停委員会の関与のもとで進められる、遺産分割の話し合いを指します。遺産分割調停を経てもなお合意が形成されない場合は、調停不成立となって遺産分割審判へと移行し、裁判官が、遺産に属するものやその性質、権利関係など一切の事情を考慮して、遺産の分割方法を決定することになります。
⑤ 相続財産の名義変更
不動産の相続人が決まりましたら、相続登記の手続きを行い、名義変更をいたします。
⑥ 相続税の申告・納付
相続開始を知られた日の翌日から10か月以内に、税務署に相続税の申告・納付を行わなければなりません。申告期限を過ぎたり、納税額が不足したりすると、延滞税や加算税が課されることとなります。
不動産相続の4つの方法
不動産を相続する方法は、大きく4つに分けられます。
◎現物分割
不動産をそのまま相続する現物分割とは、不動産を含む財産をそのままの形で相続する方法です。例えば、相続する不動産が2つあり、相続人が2人で現物分割する場合、不動産を1つずつ相続するといった形などがこれに該当します。
◎代償分割
法定相続分より少なく相続する相続人に代償金または他の財産を交付する代償分割とは、現物で相続財産を取得した相続人が、他の相続人に対して、代償財産を支払う方法です。
◎換価分割
不動産を売却して相続する不動産を現金化し、それを相続人で分割して相続するのが換価分割です。例えば、不動産の売却価格が3,000万円で相続人の子ども3人で均等に分割する場合、1,000万円ずつ相続することになります。
◎共有名義
複数の相続人が不動産を所有する際の相続方法として、複数の相続人が共有名義で相続するという方法もあります。共有名義とする際には、各相続人が所有する割合を持分割合として設定し、登記手続きを行います。
不動産を共有した場合に発生する可能性がある例
相続人の一人が単独でその家に住む場合、他の相続人は明け渡し請求することはできません。
不動産を処分する場合、共有者全員の合意が必要となります。
固定資産税の支払いについて、支払わない者がいると相続人間に連帯納付義務が生じます。
共有者の一人に相続が発生すると、その相続人の配偶者や子どもが相続人となるため、共有者が増えトラブルを誘発しやすくなる可能性があります。
不動産の価値の評価方法
相続税評価額
相続税評価額とは、土地や家屋などを相続で取得する際に、その土地や家屋などがどのくらいの価値があるのかを評価し算出した金額のことです。評価方法は、大きく「路線価方式」と「倍率方式」の2つに分かれます。それぞれの方式がどのようなものかを見てみましょう。
路線価方式 | 相続税や贈与税の計算をする際に基準となる方式であり、全国の道路ごとに路線価という土地の価格が設定されています。公示価格に対して80%程度の価格水準に設定されています。 |
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倍率方式 | 固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率をかけて評価する方式であり、主に路線価が定められていない地域で用いられています。倍率は国税庁が定めており、評価倍率表に記載されています。 |
実勢価格
実際にその不動産を売買する場合に、いくらになるのかを想定して算出される価格です。基本的には、複数ある評価方法のなかで最も高い評価額が出る評価方法であり、不動産の相続を巡って遺産分割審判が行われた場合に用いられる価格でもあります。
公示価格
不動産鑑定士の評価額を参考に、地価公示法に基づいて土地鑑定委員会が公表している土地の価格です。実勢価格よりも安く算出され、実勢価格に対して90%程度の価格が目安となります。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税などの、不動産に関する税金を計算する際に基準となる価格であり、各市町村が不動産1件ずつに対して決めています。固定資産税評価額は、土地と建物それぞれに設定されていて、土地の場合は公示価格に対して70%程度の価格水準に設定されています。
不動産相続の際にかかる費用
相続税
被相続人から相続人へと財産が相続された場合に、その財産に課される税金です。相続財産は不動産だけでなく、現金や有価証券、美術品などの全ての財産が含まれます。相続財産の総額が基礎控除額を超えている場合、相続税が課されます。
相続税の基礎控除額の計算式
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + ( 法定相続人の人数 × 600万円 )
登録免許税
不動産の相続登記を行う際に課される税金です。相続登記での登録免許税額の計算式は以下の通りです。
登録免許税額 = 土地と建物の固定資産税評価額 × 1,000分の4
その他の費用
相続登記には、登記事項証明書や戸籍謄本、住民票といった書類を取得するための費用や、書類を法務局に送るための郵送費なども必要となります。また、相続登記の手続きを司法書士に依頼するのであれば、その際に司法書士報酬を支払う必要があります。
不動産相続の際に必要な書類
基本的に全て原本の提出が必要となります
相続手続きには非常に多くの書類が必要となります。相続人が遠方に住んでいる場合は、郵送に時間がかかることもあるため、相続の発生が判明したら、すぐに書類を集めましょう。必要書類は以下の通りとなります。
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・相続人全員の印鑑証明書
- ・被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まで)
- ・被相続人の住民票の除票
- ・遺言書もしくは遺産分割協議書
- ・不動産の登記事項証明書
- ・不動産を相続する人の住民票
- ・不動産の固定資産評価証明書
不動産の種類ごとの注意点
土地のみを相続する場合
土地の相続に際して、代償分割や換価分割を行う場合、相続発生時や分割時における価格の大きな変動の可能性を念頭に置く必要がございます。分割協議の際には、将来の価格変動についても触れながら話し合い、事前に合意しておくことが非常に重要です。
一戸建てを相続する場合
相続した一戸建ての住宅を空き家のままにしておくと、「特定空家等」に指定されてしまうことがあります。特定空家等に指定されてしまうと、小規模住宅用地特例の対象外になるため、固定資産税が最大で6倍ほどまで高くなってしまいます。このほかにも、不動産を所有している限り固定資産税の納税義務は毎年継続して発生いたしますので、一戸建てを相続したものの、今後居住の予定がない場合には、売却や貸し出しなど、有効活用する方法をなるべく早く考え始めることをおすすめします。
マンションを相続する場合
マンションを相続し、居住される予定がない場合は、賃貸に出して家賃収入を得ることが可能ですが、築年数が経過したマンションの場合は、入居者の獲得が困難になることがあります。また、定期的に管理費を支払い続ける必要があるほか、築年数が増加していくにつれて、修繕積立金の金額も増大していく点にも留意が必要です。
不動産の売却のお手伝い
相続した不動産を売るケース
一戸建てやマンション、土地等の違いにより、不動産の種類によって事情が異なります。固定資産税率や相続税評価額等の事情が変わります。住宅として使用されている土地の場合は、固定資産税を抑えることができますが、活用されていない土地は固定資産税や相続税評価額が高くなる可能性があります。
また、空き家となった実家を放置しておくと、維持費用がかかるばかりでなく、思わぬトラブルの元となる可能性もございます。そうした費用を抑えるため、売却が有効な手段となることもあります。相続税の納税資金確保や、相続人間の平等な遺産分割のためにも、相続不動産の売却が行われることがあります。
なお、相続により土地を譲り受けた場合は、「不動産登記簿」(登記事項説明書)への相続登記が必要となり、土地を売却できるのは「不動産登記簿」(登記事項説明書)に所有者として記載された方のみなので、事前に確認する必要があります。
売却時にかかる諸費用
家を売却する際には、一般的に不動産会社や司法書士等への支払費用が必要となります。主な費用は以下の通りです。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼された場合には、仲介手数料がかかります。仲介手数料の料金設定は会社によって異なりますが、法律によって上限が定められております。また、仲介手数料は事務所の見やすい場所に掲示することが義務付けられておりますので、契約締結前に必ず確認されることをお勧めいたします。
登記費用
不動産の所有者変更(所有権移転)や住宅ローンの担保(抵当権)を抹消するなどの、土地や建物について法務局の不動産登記簿に登記を行う費用が必要です。登記手続きは自身で行えますが、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士へ登記手続きをお願いする場合、司法書士へ報酬をお支払いいただく必要があり、その費用は依頼する司法書士事務所によって異なります。また、そのほかの諸費用として、引越し代や住宅ローンの残債などがございます。住宅ローンを一括返済する場合、金融機関によっては、繰り上げ返済の手数料が必要になることがあるので事前に確認しておきましょう。
売却で課される税金
売却の際に課せられる主な税金をご紹介します。
印紙税
印紙税は契約書や証書などの文書に対して課税される税金です。文書の作成や交換の際に納付が必要になります。売買代金に応じた印紙税を納める必要があり、契約書記載の金額によって印紙代が決まります。
譲渡所得にかかる税金
家を売却することで得られた譲渡所得に対して、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」などの税金が課されます。譲渡所得とは、マンションや住宅、土地などの不動産を売却したことで発生した利益のことです。譲渡所得に係る税金の額は、譲渡所得に一定の税率を乗じることで算出されます。譲渡所得の税率は、売却した家の所有期間によって異なります。
相続についてのお問い合わせは
相続手続きには、相続人の確認や書類の用意など、多くの時間がかかるものです。また、相続放棄や相続税の申告には期限がございますので、事前に相続手続きについての知識を得て、適切な準備を行うことが重要となります。手続きの初め方や相談先が分からない方は、当協会までお問い合わせいただければ幸いです。